「ほらほら、カバン置いて早く手を洗ってきなさいよ。もうすぐご飯ができるから」
俺は母にそう言われて、自分がカバンを持ったままだったことに気がついた。
「あ、うん。わかった」
とだけ伝え、俺達二人はカバンを廊下に置き、洗面台に向かった。
「彰先輩いるなら先に言ってくださいよ」
手を綺麗に洗っていると佐伯が小声で俺にそう言った。しかも、何故か少しだけ怒っている。
「え?あ、ごめん。普通に言い忘れてた」
彰がいると佐伯になにか不都合なことがあるのだろうか。
「冗談ですよ!むしろ助かりました」
今度は笑顔でそう言った。俺にはその笑顔の意味と言っている意味がまるで分からなかった。
とりあえず、テーブルに来客用の椅子を出して佐伯を座らせた。
そして、母親が鍋を中央に置いて、全員分のご飯をテーブルに置いた。
「本当に突然お邪魔してすみません」
佐伯は改めて軽く頭を下げた。
「いいのよ!全然多い方が盛り上がるし」