「じゃあ、ちょっと支度をしてくるのでちょっと待っててください」
そう言って走って自分の荷物の置いてあるところに行ってしまった。
俺はというと既に帰る支度は済んでいる。帰る支度と言ってもカバンの中にバスケットシューズとかタオルとかを詰めるだけだ。
「俊って鈍いよね」
楓が帰る支度をしている佐伯を見ながらそう呟いた。
「え?どゆこと?」
俺には楓の言っている意味がまるで理解出来なかった。
「ううん。なんでもないよ。ただ、くるみちゃんが可哀想だと思っただけ」
楓は悲しそうな笑顔で佐伯を見ながら俺に向かってそう言った。
「お待たせしましたー」
佐伯は大きなリュックを背負っていてプラスで手提げのようなものを持っていたので一つ預かることにした。
「………」
「どうした?」
佐伯は何故か驚いた表情をしてから頭を下に下げた。
「いえ…ありがとうございます……」
「うふふ。じゃあ、帰ろっか…」
そんな様子を見ていた楓が俺たちに向かって不気味な笑みを浮かべながらそう言ったので、軽く頷いて帰宅するために駅へ向かった。