とりあえず、佐伯にお礼を言うために朝練が終わった後に体育館裏に呼び出した。
「手紙、読んだ。わざわざありがとうな。」
「迷惑じゃなければ良かったです。というか、呼び出したら手紙を書いた意味がないじゃないですか」
佐伯は長い黒髪を束ねていたヘアゴムを解きながらそう言った。
「いや、意味はあるよ。俺…手紙が好きなんだ。」
手紙が好きな理由は俺のおばあちゃんにある。
昔…というか幼稚園の頃、俺はおばあちゃん子だった。家は割と近いところだったから幼稚園の帰りに母親に自転車でおばあちゃんの家に立ち寄ってもらってポストに手紙を入れていた。すると、次の日にはもう手紙が返ってきていた。俺が読みやすいように全部ひらがなで。そして、大きな字で。
でも、俺が小学生になってすぐに亡くなってしまった。なんの前触れもなく寿命が尽きて亡くなってしまった。その当時は悲しかったし、いっぱい泣いた。恥ずかしいなんて気持ちは当時の俺にはなかったし、おじいちゃんに『泣いてくれてありがとう』と言われた。
あれから数年たった今もおばあちゃんから貰った手紙は全て大事にとってある。ちなみに俺があげた手紙は全て燃やした。おばあちゃんの寝ている棺の中で。