俺は再び香織さんのところへ行き、車に自分の身を乗せた。
ふと後部座席を見ると、栞里ちゃんは寝てしまっていた。
「手紙…ちゃんと読めました?」
「はい。お陰様できちんと受け取りました。ありがとうございます。」
「良かったですね。それにしても、本当に奇跡ですね。約五十年前の手紙が海を渡り、相手にきちんと届くなんて、両親もだいぶ無茶したんですね。届くかどうかなんて分からないのに…」
「そうですね…。」
「それに、両親はあなたの話はするのに、自分たちの話はしてくれないんですよ」
「お礼と言ったらあれですけど。良ければ俺の知ってる姉達の話…聞かせましょうか?」
「……そうですね。聞きたいです。」
俺は俺の息子と思われる人から貰ったくるみがいるかもしれない住所が書いてある紙を見せ、車を走らせて貰った。その間、俺は昔話をした。俺にとっては昨日のように覚えている出来事の話。ついでに、手紙の内容だったり、管理会社の社長が俺の息子かもしれないという話をした。
香織さんは楽しそうに俺の話を聞いてくれた。その姿はちゃんと楓と俊の子供なんだと教えてくれるようだった。
それから俺はくるみに会いに行く前に寄りたいところがあった。
「あの…ちょっと寄って欲しいところがあるんですけど…」
俺は香織さんに軽く頭を下げながらお願いした。
くるみが生きているとわかった以上、俺にどうしてもはやりたいことがあった。