ここで楓の努力を踏みにじる訳にはいかない。もし、ここで自分のせいで楓が九州に行くことだって知ったら絶対彰は止めるだろう。
「多分、父さんは許さないけどね」
「…それも俺が何とかするよ」
俺はそれだけ言った。そして、俺たちは再びゲームをした。

「くるみちゃんにこれ渡してくれない?」
次の日の朝、彰と一緒に学校に行こうとした時、母親に手紙を渡された。
「佐伯に?」
「中は別に見てもいいけど、大した事は書いてないわよ」
「…別に見ないけど。まぁ、わかったよ」
それだけ言い残して俺たちは家を出た。
今日は部活の朝練はあるのだが、彰は久しぶりに顔を出したいと言って着いてきた。
「少しだけプレーしてみようかな…」
学校へ向かっている途中、彰は俺にそんなことを言い始めた。
「いいんじゃない?」
俺は芽吹さんのあの言葉を信じていた。『初期段階だから大丈夫だよ。』その言葉を。
そして、ちらっとカバンを見るとバスケットシューズが入っていた。