春斗さんは朱里さんに笑顔を向けた。
「私もだよ。たまに芽衣が夢に出てくる。」
その女性は『芽衣』という女性なのか。そして、二人は泣きそうだった。泣くのを必死で耐えていたのが俺には伝わった。
「ごめん、こんな暗い話して。」
「大丈夫ですよ。私の方こそすみません。なんか…」
「いや、いいんだ。最近疲れてたんだけどまたやる気が出てきたよ」
春斗さんは優しい笑顔で俺たちを見ていた。
「とりあえず、こんな暗い話はよして〆に入ろうか!」
そんなくらい空気を春斗さん自身が壊した。
「〆?」
「了解、父さん」
春斗さんの掛け声と共に芽吹さんは椅子から立ち上がり台所の方へ行ってしまった。
数分して戻ってきた芽吹さんは両手にボウルを抱えていた。
「麺…ですか。」
はっきり言って、お腹はもういっぱいだけど、もつ鍋の汁を麺に絡めて食べるのを想像したら食べたくなってしまった。そして、再び鍋を温め直して麺を投入した。