彰はニヤニヤしながらそんなことを言った。でも、彰の言う通り、楓のためだった。
俺は必死だったのかもしれない。楓に振り向いてもらうために。そんなことじゃ振り向いてくれないと気づいたのは割と最近だ。だから、俺は楓が喜んでいたバスケをすることにした。
「俊…俺に気遣ってる?」
「…は?彰まさか…重度のシスコン?」
「んなわけねーだろ。俺が病気だから楓とは恋できないとか、そういうの」
「………」
「図星かよ」
俺が何も言えずにいると彰は勝手に納得してしまった。
「気にすんなよ。多分だけど、向こうも俊のこと好きだと思うし」
俺はそんな確証のないことは信じるつもりは無い。第一今は彰のことで頭がいっぱいだと思った。
「…そんなことないだろ。」
「俊さ、この前俺に『諦めるな』とか言ったけど自分が諦めてるじゃん」
彰が初めて俺を煽った瞬間だった。
「…煽ってんの?」
「こうでもしないと俊は行動しないだろ?」
何も言い返せなかった俺は、逃げるようにシャワーで泡まみれの身体を流し、彰より先に風呂に入った。