今ここで聞いたら楓がわざわざ離れたところで芽吹さんに話した意味が無くなるのはわかっていたが、どうしても気になってしまった。
「なんでもないよ。そんなことよりご飯にするって」
完全に話をそらされた。でも、ご飯にすると言うので仕方がなくそれに従うことにした。
「…そっか」
「何か、希望とかあるかい？」
ここはここら辺の名物で、と答えるべきだろうか。
「俺、あれ食べたいです。もつ…鍋？でしたっけ」
俺は特に希望などなかったので彰達に託そうとしたがそんなこと待つことなく彰が答えた。
「あ、もつ鍋ね。少し時間かかるから先にお風呂にはいっておいで。楓ちゃん、少し手伝ってくれるかい？｣
「はい！」
楓は元気よく返事をして芽吹さんの方へ行ってしまった。
「朱里さんはゆっくりしててください」
芽吹さんは優しい人だ。会って数時間だが、それだけはわかった。
俺と彰は芽吹さんに言われた通りお風呂に入ることにした。部屋の隅っこに置いたボストンバッグからパジャマとか諸々を持ちお風呂場と思われる場所に向かった。