「朱里…久しぶり、僕達は元気だよ。」
優しそうな声と笑顔で俺たちに向かって、挨拶をした。俺は『僕達』ということが少しだけ気になった。
「あれ、君…どこかで会ったことあったかい?」
医院長は俺を見て単純な疑問を投げかけてきた。
でも、彰と楓のおじいちゃんの葬式で会いました。なんて、言いにくかったから、「随分前に一度だけ…」と濁した。
「そうだよね…。君、随分と大きくなったね」
俺の方に近づいてきて頭を撫でながらそう言った。
「あの…『僕達』って他に誰かいるんですか?」
俺が頭を撫でなれていると、楓がそう聞いた。すると、俺を撫でてた手を頭から離し、晴天の空を見ていた。
「うん。僕のここにもう一人いる。」
彼は胸に手を当て、ポンポンと二度胸を軽く叩いた。
すると、今度は朱里さんの方が口を開いた。
「この人は橋本春斗と言って、見ての通り医者だ。彼の言う通り彼の心の中に私の親友が眠ってる」
俺は朱里さんの説明で全てを察した。おそらくこの人には悲しい過去があったんだ。俺達には計り知れない悲しい過去が。そう、橋本さんの顔が物語っていた。今思えば、初めてあったあの時も同じような顔をしていた。