「……え?こんなに?」
「こんなにって九州に行くんなら普通でしょ?むしろ少ないくらいよ。朱里さんに全部払わせる訳にはいかないじゃん?だって、飛行機のチケットだって用意してくれたし」
「…そうだよね。ありがとう」
朱里さんが『この旅行』に連れてってくれるということにしている。実際そうだけど。
「すぐに財布にしまいなさいね〜」
そう言って俺の部屋から出ていった。
それから俺は、昨日準備したカバン背負い、ボストンバッグを肩にかけ母に「いってきます」とだけ伝え家を出た。
俺が家を出た瞬間に彰もタイミングを見計らったのか、同時に家から出てきた。
「おはよう」
「あ、うん。おはよう」
彰は俺と同じようにボストンバッグにリュックを背負っていた。
「じゃあ、向かいますか。俊は俺のためにわざわざ九州まで行くのか?」
「何言ってんだよ。わざわざとかじゃない。俺が彰のためにしたいんだよ」
別に格好つけている訳では無い。心の底からそう思っていることだ。