全部佐伯の言う通りだった。
「そーだぞ俊。」
佐伯では無い声が聞こえたのでパッと横を見ると、制服だったが、バスケットシューズを履いた彰がいた。
「あれ?彰先輩じゃないですか。部活戻ってくるんですか?」
「いや、ごめんそれはまだ無理かな…。今日はただの見学だよ」
佐伯に向かって彰は笑顔でそう返した。
「それは残念ですね」
佐伯は本当に残念そうに返事をした。全てを知っている俺は何も言わなかった。というか、言えなかった。
とりあえず、試合は順調に進んでいき、開始五分で俺のいないAチームは二十四点を取っており、Bチームの得点をゼロに抑えていた。
「見ての通りですよ先輩。」
「ああ、そうだな。俺がいない方がいいってことね…」
実際にこの目で見るのは辛い。彰の病気について直接彰の口から言われるのと同じだ。ショックのレベルはあっちの方が大きかったけど。
「それは違いますよ先輩。」
俺がもう俺のいない試合なんて見たくなくて下を向いていると佐伯に否定をされたので思わず顔をあげた。