楓は、前に彰と俺が一緒にプレーしている姿をもう一度見たいみたいなことを言っていたのを俺は叶えてあげたかった。
「うん。見たいな…」
決して元気のある声だとは言えないけど、喜んでいることだけは伝わった。
「ここで平気」
佐伯の家を歩き始めて、朱里さんの家に着く直前の曲がり角で、楓が手を振りながら走って家まで行ってしまった。
「あ、うん。」
今からついて行ってもただのストーカーなので自分の家に帰ることにした。
楓は喜んではいた。でも反面、彰の体の心配をしている気がした。
彰は体は大丈夫と言っていた。でも、あれは俺が彰を怪我をしていると思っている前提の話だ。俺もそれに関しては心配だった。
そんなこと考えがら夜道を歩いていた。暗い暗い夜道を。まるで、自分の将来を見ているような夜道を。街灯が消えかかっているからだろう。余計に暗く見えた。