そんな生活をしている俺らの方が魚達からしたら羨ましいのではないだろうか。俺はそう考えてしまう。
「私は魚のように自由に海を泳いでみたい」
楓は水槽に手を当てながらそう言った。でもそれに関しては俺も同意見だった。一度でいいから海を泳いでみたかった。
「そーだね…」
ふと周りを見ると彰と佐伯外無くなっていた。
「あれ?彰達は?」
楓も同じことを考えていたらしい。
「多分先に進んでるんじゃないかな。慌てずゆっくり見ていこう?」
俺はそう提案した。今はあんまり彰に会いたくなかった。というか彰と二人きりになりたくなかった。あの話をされると思うと怖かった。
「そうだね」
特に楓は不思議に思うことなく俺の提案に頷いた。
それからはクラゲやペンギン、小さな水槽にいる魚たち、エイやサメなどを見た。
水族館内の半分くらいの場所で深海生物を見ていると俺の携帯が鳴った。
『今どこですか?』
スマホの画面には『彰』と表示されていたけど出たのは佐伯だった。おそらく一緒にいるのだろう。