「…だよね」
相変わらず楓のテンションは低いままだった。俺も人の事言えないけど。
「…うん」
それからは終始無言で駅に向かった。
駅に着くと改札の横で待ってくれていた佐伯と彰が手を振っていた。
「遅いぞー」
「そうですよ俊先輩ー!」
俺たちがこんなテンションなのかの理由を何も知らない佐伯だけは俺達とは真逆でテンションが高かった。
「ごめんごめん。準備に手間取っちゃって」
「とりあえず時間なんで行きましょう!」
俺の言い訳は聞かず、佐伯は慣れたように俺たちを案内した。
「随分と慣れてるんだな。電車に」
電車では彰、佐伯、俺、楓の順番で座っている。
そして今、彰が佐伯に向かって話しかけた。
「あの水族館、昔よく母と来てたんですよ」
「そうなんだ」
彰は、へー、程度しか思わなかったと思うが彼女の母親はプロのバスケ選手だ。
「へー仲良いんだね」
楓がそれに乗っかるように、そして羨ましがるようにそう言った。
「そんなことないですよ…昔と言っても随分昔のことですから」