帰る準備が終わり、学校の正門を通り過ぎたところで佐伯がそう言ってきた。
「あ、別にいいけど…。なんで俺なの？友達と帰れよ」
別にこいつと帰るのが嫌って訳では無いけど、出来れば楓と帰りたいが、楓は楓でいつも部活仲間と帰宅するから誘えないでいる。
いつもは家が隣なので彰と帰っていたがあいつが部活をやめて以来ずっと一人で帰っていた。
「ダメ…ですか？」
目をキラキラ輝かせながら俺にそう言った。
「いや、別にダメじゃないけど。なんで？」
「別にいいじゃないですか！理由なんて特にないです。ただ一人で帰るのはちょっと寂しい…というか」
「まぁいいけど。じゃあ行こうぜ」
他の部活仲間は別にそこまで仲がいいという訳では無い。ただ一緒にプレーをしている人、という感覚。現に俺を置いてもうみんなは帰ってしまった。
「そういえば俊先輩はどうしてバスケ部に入部したんですか？」
部活のことやクラスで起こった面白い話などをしている時に聞かれた佐伯にされたごく普通の質問だった。