風呂に入った意味が無いくらい走った。とにかくまっすぐ朱里さんの家を目指した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
家の前に着き一旦、深呼吸をして落ち着いたところでインターホンを鳴らした。すると直ぐに楓が家の中から出てきた。
「俊……?」
俺がここにいることに驚いたのか、俺の名前を小さく呟いて黙ったままだった。
「行けないってどういうことだ」
シンプルかつ端的にそう言った。理由が一刻も早く知りたかった。俺は門扉から玄関ドアまで一歩ずつ歩み寄った。
「中入っていいか?というか入るわ」
楓の部屋以外、明かりが着いていなかったのでおそらく朱里さんは出かけているのだろう。俺はお構い無しに部屋に上がった。そして、楓は首を縦に振り入れてくれた。
「楓…もしかして一人で九州まで行こうとしてんのか?」
楓の部屋に入るなりすぐに目に入ったのはどう考えても明日の水族館のためとは思えない量の荷物だった。