神様には、お姉さんがいるらしい。一人っ子の僕は、そんな神様を少し羨ましく思っていた。

「お姉ちゃんは、すんごい巨乳なんだよ~。私と違って背も高いし。美人。でもスゴく人間の男が嫌いだから、ハクシが妹と仲良くしてるの良く思ってないんだよ」

「へぇーー。まぁ、でも大丈夫だろ。ここは、天国じゃないし。何も出来ないっしょ~」

「あっ、ダメだよ! そこにいちゃ」

突然、神様に思い切り突き飛ばされた。地面に転がり、全身を強打した。

「いきなり何すんだっ!」

猛抗議。でも神様は、そんな僕を無視し、目の前を指差していた。

シュウゥゥ…………。

僕が、先ほどまでいた場所。そこには、天から降ってきたと思われる漆黒の槍が地面に深く深く突き刺さっていた。今も槍からは赤い湯気が出ている。持ち主の凶悪な意思をこれでもかと強く感じた。


◆◆◆◆◆◆【双子の弟】◆◆◆◆◆◆◆◆


俺には、双子の弟がいる。

顔は似ているが、性格は逆で。いつも喧嘩ばかりしていた。


同じ物を2つ買う余裕のない我が家は、だいたい同じ物を二人で共有する必要があった。


だから、ゲームも一時間交代。


成長し、二人とも大人になると自分で好きな物が買えるようになった。


それなのにーーーー。


「なんで真似するんだよ」

「そっちこそ」

悲しいことに、だいたい同じ物を買ってしまう。
そんな弟が、三十歳手前で癌で亡くなった。


「真似するなよ」

「…………………」


俺の命は、あと半年。癌の進行は、双子でも少し違うらしい。病院を抜け出し、弟と高校まで一緒に過ごした狭い部屋で、二人でクリアしたゲームを最初からプレイする。


「お前、ゲーム上手かったよな。この先、どうするんだ?」


途中から進めなくなり、ゲームを諦めた。
本来の目的を思い出した俺は、押入れの中から、弟の宝箱を引っ張り出した。


「ハハ……ハ」


中には、大量の爪が入っていた。弟が愛した女の赤い爪。異常な性癖。


俺は、その宝箱に俺が愛した女の爪をザザァァと入れ、一緒にした。


「生爪を剥がす時が、一番興奮するよなぁ」



もうすぐ俺は、弟に会える。楽しみで仕方ない。


お前もだろ?


だから、もう少しだけ地獄で待っていてくれな。