私達は、異界の入口で違法に営業を続けるボロいスナックの前にいた。仄かな明かりを放つその店の重厚な扉を躊躇なく蹴り飛ばす。

ドガァッ!!

扉は、一瞬で粗大ゴミと化した。
飛び跳ね、転げ回りながら、店から汗まみれのオヤジが出てきた。

「ひぃいぃぃ! な、な、なな、何でっ、 いつもいっつも扉を蹴破るんだ!! ちゃんと入口に立派なチャイムがあるでしょうが!!」

猫耳姿のオヤジは、唾を飛ばしながら私達に猛抗議した。

「アナタに頼みたいことがあるの」

「この状況で頼みごと? ふっ、ふざけるな! 早く出ていけ、私の城から」

メリーザは、無表情でオヤジの猫耳を掴み、

「じゃあ、頼むんじゃなくて命令するわ。そのデカ耳で良ーーく聞けよ。二度は言わない。お前が持ってるさぁ、特別な『ギフト』が欲しい」

ギフト………。その言葉を聞いた瞬間、猫耳オヤジの表情が変わった。

「知らないな。さぁ、早く帰ってくれ。とっくに閉店時間は過ぎてるんだ」

「お願いします………」

ナタリは頭を床につけ、土下座をした。

「っ!? 何でこんな奴に」

「どうしてもアレが必要なんです! お願いします」

「ナタリ………」

メリーザもナタリの隣で、同じように土下座をして頭を下げた。

「こりゃあぁ、いい。三神に一番近いとまで言われた死神ナタリと魔王の愛娘メリーザの土下座。こんな姿を見れる日が来るとはね。今日は、なんて良い日なんだぁ~~。次は、裸になってご奉仕でもしてくれるのかな? ニヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

店内に響く下卑た笑い声。

「もしアナタが私達に協力したら、お姉ちゃんは確実にアナタを消します。だけどね、協力しなくてもあと三十四日後にアナタは姉の手配した使者に消される。この違法営業がバレてね。ギフトさえあれば、お姉ちゃんに勝てる可能性があるの。だから………。だから、私達に賭けてみない?」

ナタリは、男を誘うような仕草でイヤらしく、その赤い唇をペロッと舐めた。

「………………なるほどね~」

数分後、猫耳オヤジは店の奥から首輪を付けた蛇女を連れてきた。その女は、顎を外し、大きく口を開く。その口の中に強引に両手を突っ込み、竜の皮で包まれた物を取り出した。それをナタリの前に投げる。

「賭けは、大大大好きよ~~。特に命懸けのゲームはね」


◆◆◆◆◆【ゲーム】◆◆◆◆◆


盗みを繰り返し、気づいたらこの刑務所にいた。
まぁ、これも僕の人生。仕方ない。そう諦めている。

寝る前に僕たち囚人は、一人ずつ個室に入れられ、ビデオを見せられる。ちょび髭生やしたオッサンが、何やら語っている。

「大人も子供も大なり小なりストレスを抱えています。そのストレスの発散方法はさまざまありますが、自分がどれだけストレスを抱え込んでいるかを具体的な数値で知ることはありません。このゲームは、そんなストレスを『数値』で教えてくれます。ストレス値をいくつかの質問(図表含む)に答えていくことで正確に割り出します。また、その質問に答えていく中でその人に合ったストレス発散方法も示してくれます。また、ストレスの数値とその種類が分かることでグループを作ることが出来ーーー」

僕の最初のストレス値は『3000』。

今は、『550』。値が200以下になると出所出来るらしい。

ゲームが教えてくれた僕のストレス発散方法。


僕は、今日も同じグループの囚人番号32と囚人番号21とロシアンルーレットで命を賭けてゲームをする。
『生き残れる』と、射精するほどの言葉に出来ない満足感を得ることが出来る。


まぁ、無事に出所出来るかどうかは、僕の運次第なんだけどね。