神様を家に呼び、前から気になっていたことを聞いてみた。

「あの、さ………。僕の親のことなんだけど。どこに行ったの? もう何週間……いや、もっと…………長く見てない。おかしいだろ、覚えていないなんて。どうせ、神様が関わってるんでしょ?」

「それを知ったら、あなたは……」

今まで見たことのない寂しい顔で、僕を見つめる神様。そのキレイな両目からは、今にも涙が溢れそう。

卑怯。
そんな顔されたらさ………。もう、何も言えない。

「神様が言いたくなったら、教えてよ。ふぅ~~、あ~~~。久しぶりに二人でゲームする? 菓子とか買ってさ、朝までやろうぜ」

「ハクシ………。私を許して」

聞こえない振り。

「聞こえない振りしないで」

「あのさ。とりあえず、キスしても良い?」

「フフ……。ハクシって、たまにスゴいこと言うよね。神に欲情するなんて、良い度胸してる。まぁ、でもいいよ。君は特別だから」

彼女を失いたくなかった。親の話を聞くことで今の二人の関係が無になってしまうなら、知らなくても良い。

とりあえず、今はーーーー。


◆◆◆◆◆◆【◯◯◯家】◆◆◆◆◆◆

この家に比べたら、牢屋の方がまだ温かい。

本気でそう思う。

昔から、我が家には母が決めたいくつかのルールが存在していて。母の言うことは絶対。反論は許されない。前に一度、父が母の態度に軽く注意をしたことがあった。


「………………」

その後すぐ、父は行方不明に。

世間的には、行方不明。でも実際は、今もこの家の庭で腐敗を続けている。そんな異常事態にもかかわらず、『特別な教育』を受けていた僕と妹は、父が悪いことをしたから母に罰せられたとしか思わなかった。


父がいない、母と子の貧乏な生活。
新聞配達、飲食店などのアルバイトに精を出す毎日だった。


ある日。バイトとつまらない授業で疲れきった僕を母が心配して。


「大丈夫?」

「うん。大丈夫」

「嘘………。疲れた顔してるよ?」

「……………」

雪のように白い母の顔。


「もう一人減れば、生活も少しは楽になるんじゃない?」

「いやっ!! 僕なら大丈夫だから。バイトだって、今以上に頑張るし。大丈夫だから」

「道子を台所に連れてきなさい」

「母さんっ! 妹は関係ない」

「返事は?」

「……はぃ」


…………………………。
……………………。
………………。


その晩。庭に死体が増えた。
僕が、父のすぐそばに埋めた。


母をーーーーー。


「ねぇ、お兄ちゃん。これからは、二人で力を合わせて頑張ろうね!」

「あぁ……」


僕は今、母以上の狂人と二人で暮らしている。