しかし……、そこには何も見えない。
「何も……、見えないんですが……」
 オディーヌは困惑しながら答える。
「しょうがないなぁ、じゃ、ビジュアライズしてあげるね!」
 そう言ってシアンが目をつぶると、光が渦巻いていた辺りから虹色に輝くリボンが高速で噴き出してきた。
「うわぁ!」「わっ!」
 驚くオディーヌとレオ。
 リボンはどんどんと噴き出され、テーブルも床もあっという間に輝くリボンで埋め尽くされていく。
 オディーヌは自分の周りにもワサワサとやってきたリボンをじっと観察する……。
「あれ? これ、数字……だわ」
 リボンはよく見ると1と0の文字が無数に組み合わさってできており、文字ごとに赤、青、緑で色付けされて輝いていた。虹色に見えたのはこれらの組み合わせだったのだ。
「そうだね、宇宙の根源(エッセンス)はこの無数の1と0の数字の集合体なんだ」
「え? 数字……?」
 レオは驚いてリボンをジッと見つめた。
「そう、この世にあるものは全てこれで構成されているんだ」
 シアンは両手を広げ、満足そうに言う。
「あれ? この数字、リズムがあるね……」
 レオがリボンのいろいろな所を見ながら言った。
 1と0の数字は時折変わるがそこには一定のリズムがあったのだ。
「おぉ、良く気づいたね。そう、宇宙の根源(エッセンス)はダイナミックに躍動しているんだよ」
 数字が変わるたびに色も変わるため、虹色のリボンはリズミカルにきらめきを放っている。
「まるで歌を歌っているみたいだ」
 レオはうれしそうに言った。
「そう! 僕たちの世界は(うた)でできているんだよ」
 シアンはそう言うと両手をパァッと高く掲げ、宇宙の根源(エッセンス)を宙に放った。
宇宙の根源(エッセンス)は窓をすり抜け、虹色に輝くリボンをどんどんと吹き出しながら渋谷の空高く飛んでいく。それは上質なイルミネーションとなって煌めきながら東京の夜空を彩った。
「すごい……。シアンはあの数字を理解しているから何でもできる……ってことなんですね?」
 オディーヌは宇宙の根源(エッセンス)の煌めきに目を奪われながら聞いた。
「そうだよ。この宇宙のすべてはあの歌う数字なんだ。数字を理解し、数字を操作する事でこの宇宙の事は自由にできるんだ」
「すごぉい……」
 オディーヌは絶句する。