そう言って、シアンはニコニコと笑った。
 ジュルダンはニヤッといやらしい笑みを浮かべ、
「千枚じゃ足りんな。俺が勝ったら今晩お前に夜伽(よとぎ)をやってもらおう」
 そう言って、豊満なシアンの胸をいやらしい目つきで見た。
「いいよ!」
 シアンはあっけらかんと返す。
「ダ、ダメだよ! シアン! 夜伽っていうのは、裸にされて、エ、エッチなことをされちゃうんだよ!」
 レオは真っ赤になって言ったが、
「大丈夫、負けなければどうということもないよ!」
 と、優しくレオを見た。

「負けないだと? 何で勝負するんだ?」
 ジュルダンは(いぶか)しげに言う。
「何でもいいよ? 好きに決めて」
 うれしそうに言うシアン。
 ジュルダンはちょっと考えて……、
「じゃあ、腕相撲な」
 と言ってニヤッと笑った。
「いいよ!」
 シアンはそう言うと、ヒョロッとした腕を曲げ、わずかに盛り上がる力こぶを見せた。
 ジュルダンはドアを開けると、
「ウォルター! 来い!」
 と、叫んだ。
 ほどなく、筋肉ムキムキのごつい男がやってくる。
「ウォルター、このネーチャンと腕相撲して勝て」
「えっ? この子と……ですか!?」
 ウォルターはヒョロッとした女の子と腕相撲なんてどういうことか、悩んでしまった。
「遠慮せず、バチコーン! と腕をへし折ってやれ!」
 ジュルダンは発破をかける。
「わ、わかりました……」

 ジュルダンは脇に置いてあった小さな丸テーブルを持ってきて、椅子を用意し、二人を座らせた。そして、
「はい、じゃあ手を出して……」
 そう言って二人の手を組ませる。
「ウォルター、手を抜くなよ! 勝ったら金貨一枚やるからな。今晩のお楽しみがかかってるんだ。絶対勝て!」
「き、金貨!? か、勝ちますよ!」
 ウォルターの気合が十分に上がったところで、ジュルダンは声をかける。
「レディー!」
 部屋にはピリピリとした緊張感が走る。
 レオは手を合わせ、不安そうにシアンを見た。もちろん、神様より強いシアンが負ける訳がない。しかし、ジュルダンが狡猾な男だということは嫌というほど知っている。絶対ただでは負けないはずだ。嫌な予感にレオは押しつぶされそうになる。
 シアンは相変わらず口元に微笑みをたたえ、勝負を楽しみにしているようだった。













1-9. アヒルピョコピョコ