激しい地鳴りがして大地震のように地面が揺れ、レオも王女も倒れ込んでしまう。

 揺れが収まり、恐る恐るレオが後ろを振り向くと、大穴だった所には小高い丘が盛り上がっていた。

「えっ?」
 レオはゆっくりと起き上がりながら様子を確認するが、それは土砂が積みあがった工事現場のようになっていた。

「うーん、これじゃ道が引けないなぁ……」
 シアンはそう言うと、再度両手を振り下ろした。

 ズーン!
 激しい地鳴りが響き渡り、道の所だけ一直線に凹んで、切通のように成形された。

 レオも王女も唖然(あぜん)としてその恐るべきシアンの技に圧倒される。

「僕はね、『王女様を助けて』ってお願いしただけなんだ……」
 レオは青ざめながら言った。
「ありがとう……。彼女は何者なの?」
「深淵より来た根源なる威力(オールマイティ)って言ってたよ。神様より強いんだって」
「神様より!?」
 王女は丸い目をしてレオを見つめた。
「悪い人じゃないと思うんだけど、なんだか雑なんだよね……」
 レオは渋い顔をして首を振った。

 シアンは道の出来を見て満足そうにうなずくと、
「道をつなげたよー」
 と言いながら、レオ達のそばにシュタッと着地する。

 レオも王女も言葉を失ってただシアンを見ていた。
「あれ? もう大丈夫だよね?」
 シアンはニコニコしながら言う。
 レオと王女はお互いを見つめ合って言葉を探した。

「お、お疲れ様。でもなんでこんな盛り上がっちゃったの?」
 レオが聞いた。
「うーん、吸い込んだものをそのまま戻しただけなんだけどな……。まあ、道が通ればいいんでしょ?」
 シアンはうれしそうにそう言った。

「えっ!? これ、吸い込んだ物なの? じゃあ、吸い込まれた人はどこに居るの?」
 レオが不安そうにシアンに聞く。
「えっ?」
 シアンは驚いたようにレオを見る。
 嫌な沈黙の時間が流れた。

 シアンは急に駆け出すと、手を使ってザクザクと丘を掘り始めた。
「まさか……、生き埋め……なの?」
 王女は不安げに言う。
「ま、まさか……」
 レオは青い顔をしてシアンを見つめた。

 やがてシアンは何かを掘り当てたが……、困惑した表情を浮かべ、また埋め戻してしまった。
 遠目には誰かの腕のようだったが……。