カフェオレ三十路女が「ちょっくら青春してみるっ!」 とガンバったら、結構深い沼にハマってしまった件

父はそれでもこの状況を独りで打破しようと考えていた。

「お父さん、もう誰か呼ぼう」
「ダメだっ。真希は電車で帰れ。俺は意地でもコイツと一緒に家へ帰る!」


父のその態度は男らしいのかも知れない。でもね、男らしいのと強情を張るの

は違うんだから。

「いい加減にして! お父さんの気持ちは分かるけど、誰かに助けを求めることってそんなに恥ずかしいこと? そんなに惨めなこと? 私はそうは思わない……」


私は父を怒鳴りつけた。

今まで生まれて一度も父に反抗なんかしたことないこの私が怒鳴りつけた。


「お父さん、よく車も生き物だって前言ってたよね。困ってる時は助けよう、
助けてあげるのが人情でしょ。このビートルも生き物なら、今一番困ってるのはこのビートルなんだよ? 助けてあげようよ、意地よりももっと大切なものあるでしょ」


父は黙ってしまった。怒られるかと思いきや、

「……そうだな」


とぽつりと呟いた。

「人間って助け合って生きてるじゃん。お父さんも辛い時は頼ってよ、私を……」


今まで甘えてばかりの私だったのに、こんな台詞が自然と言える

自分に自分自身驚いていた。

私は手に持っていた砂糖がほんの少しだけ入ったブラックコーヒーの紙コップ

を地面に置くと、サービスエリアにいる人たちに向けて、両手を口元へ充て、

大声で助けを求めた。

「すみません! どなたかこの車にバッテリー充電させてもらえませんか! お願いします! 車動かなくて困ってます!」


すると近くにいた二十歳そこそこの若者が「良かったらいいっすよ」と言って

くれた。

彼のセダン車のバッテリーからプラグを繋いで、ビートルに電気を補給した。

とにかくとりあえず家へ辿り着くまででいいのだ。

ビートルのライトは普通の明るさまで灯り、エンジンも普通に掛かるようにな

った。もう一安心だわ。

するとその男は父に向かって手を差し述べた。

「おじさん、助けてやったお礼」
「……?」
「タダで助ける訳ないでしょ。それとも、人が助けてやったのにその恩もないわけ?」
「なにっ?!」


 父は、今にも殴り倒さんばかりの眼でその青年を睨み付けた。

 私は父とその青年の間に割って入り、「いくら?」と訊いた。