ホテルに着くとツイン部屋に私たちはチェックインした。
父はシングル部屋二つでいいと私に気遣ったのだろうが、母との想い出を再び
思い返すのならツインの方がいい、そう私から願い出た。
何年ぶりだろう……父と隣同士のベットで眠るなんて。
小学生の頃以来かしら。
父はいつものように寝る前のクロスワードパズルをやっていた。
私はこっそりと持ってきた舞台の台本の暗記をしていた。
「すまんな、こんな旅に付き合わせて。迷惑だったろ」
父はクロスワードを雑誌を閉じると、私に向かってそう言った。
「ううん、そんなことないよ。私、結構楽しかったもん」
「そうか、それなら良かった」
「でも、ここで終わりだよね。それとも、これからまたどこか行くの? それはカンベンね」
と、笑った。父も笑って、
「明日、家へ帰る。安心してくれ」
「良かった」
ちょっと子供っぽく笑ってみせると、
「そろそろ寝るね。お父さんは?」
「ああ、もう寝る。明日、また早いからな」
父はクロスワード雑誌をテーブルに置き、眠りについた。私も寝る前の歯ブラ
シをし、部屋のライトを消して自分のベットに潜り込むと、
「おやすみ」
と言った。父も同じように、
「おやすみ」
と言った。
それからどれぐらいだろう、父が天井に向かって目を開けたまま、
こう切り出した。
「……来週からな、お前も一回来ただろう、あの学校で嘱託として先生をやることになった。シルバー人材センターからの出向としてでなく」
「そうだったんだ……おめでとう」
私も天井に向かってそう呟いた。
あの背広にネクタイもひょっとして、その面接だったのかも知れない、と私は
思った。
「いいぞ、もう俺に気ぃ遣わなくて」
「えっ」
「またしろよ、独り暮らし。その方が仕事に集中できるだろ」
私は嬉しかった。父は私のことをちゃんと考えていてくれたからだ。
「俺のことは気にするな。もう平気だから」
父はシングル部屋二つでいいと私に気遣ったのだろうが、母との想い出を再び
思い返すのならツインの方がいい、そう私から願い出た。
何年ぶりだろう……父と隣同士のベットで眠るなんて。
小学生の頃以来かしら。
父はいつものように寝る前のクロスワードパズルをやっていた。
私はこっそりと持ってきた舞台の台本の暗記をしていた。
「すまんな、こんな旅に付き合わせて。迷惑だったろ」
父はクロスワードを雑誌を閉じると、私に向かってそう言った。
「ううん、そんなことないよ。私、結構楽しかったもん」
「そうか、それなら良かった」
「でも、ここで終わりだよね。それとも、これからまたどこか行くの? それはカンベンね」
と、笑った。父も笑って、
「明日、家へ帰る。安心してくれ」
「良かった」
ちょっと子供っぽく笑ってみせると、
「そろそろ寝るね。お父さんは?」
「ああ、もう寝る。明日、また早いからな」
父はクロスワード雑誌をテーブルに置き、眠りについた。私も寝る前の歯ブラ
シをし、部屋のライトを消して自分のベットに潜り込むと、
「おやすみ」
と言った。父も同じように、
「おやすみ」
と言った。
それからどれぐらいだろう、父が天井に向かって目を開けたまま、
こう切り出した。
「……来週からな、お前も一回来ただろう、あの学校で嘱託として先生をやることになった。シルバー人材センターからの出向としてでなく」
「そうだったんだ……おめでとう」
私も天井に向かってそう呟いた。
あの背広にネクタイもひょっとして、その面接だったのかも知れない、と私は
思った。
「いいぞ、もう俺に気ぃ遣わなくて」
「えっ」
「またしろよ、独り暮らし。その方が仕事に集中できるだろ」
私は嬉しかった。父は私のことをちゃんと考えていてくれたからだ。
「俺のことは気にするな。もう平気だから」
