「ああ、まったくだ……」
父はしみじみに言った。
「母さんももう一回連れてきたかったな……」
やっぱりそうだったのね、私は父がなぜこの旅をしようと思い立ったのか、そ
の心中を察した。
「真希……分かってるとは思うけど、伊勢神宮には一回……」
「来てたんだね、お母さんと。で、あそこでお母さんに真珠を買ってあげたんだ?」
微笑みながら言う私に父もどこか頬がゆるみ、そして頷いた。
「お前が産まれる前、婚約時代に一回来た」
「私が産まれる前って言うと……」
「平成2年になる。日本はバブルで浮かれまくってたことをよく覚えてる。今回みたいに車で来たからな」
「あのビートルで?」
「ああ、アイツも二度目のお伊勢参りだ」
父は嬉しそうに赤福をぺろりと一口で頬に入れた。
その味も。
この空気も。
ただ一つ違うのは父の横には母ではなく私であること以外は。
何もかも懐かしそうに父は赤福を食べていた。
その日は伊勢市内にあるビジネスホテルに私たちは泊まった。
夕方にうどんと赤福をお腹いっぱい食べたから、夕食は市内にある定食屋で軽
く済ませ、ビジネスホテルに帰る途中だった。
「30年前はこんなに道路も整備されてなくて、アスファルトだけど白く亀裂だ
らけのボコボコの道だったな」
父は近鉄山田線とJRが交差する踏切を越え、ビジネスホテルに帰る途中の道
でそう呟いた。
「へぇ、そうだったんだ。市街地なのにボコボコ道なんて、今の時代には考えられないけどね」
「そうだな」
「時代は動いてるんだね」
父は何か考えている様子だった。
「まったくだ。今日泊まるビジネスホテルも昔は普通の旅館だった」
「そうなんだ、お母さんと来た時も、あのホテル……ううん、旅館に」
何か感慨深かった。父は母と来た旅館に30年の時を越え、娘の私と泊まろうと
思ったのだ。
それが心に響いた。
嬉しかった。
「……時代は動いてる……か。そうだな、動かなくちゃな」
そう言う父の横顔はどこか決意のそれが伺えた。
父はしみじみに言った。
「母さんももう一回連れてきたかったな……」
やっぱりそうだったのね、私は父がなぜこの旅をしようと思い立ったのか、そ
の心中を察した。
「真希……分かってるとは思うけど、伊勢神宮には一回……」
「来てたんだね、お母さんと。で、あそこでお母さんに真珠を買ってあげたんだ?」
微笑みながら言う私に父もどこか頬がゆるみ、そして頷いた。
「お前が産まれる前、婚約時代に一回来た」
「私が産まれる前って言うと……」
「平成2年になる。日本はバブルで浮かれまくってたことをよく覚えてる。今回みたいに車で来たからな」
「あのビートルで?」
「ああ、アイツも二度目のお伊勢参りだ」
父は嬉しそうに赤福をぺろりと一口で頬に入れた。
その味も。
この空気も。
ただ一つ違うのは父の横には母ではなく私であること以外は。
何もかも懐かしそうに父は赤福を食べていた。
その日は伊勢市内にあるビジネスホテルに私たちは泊まった。
夕方にうどんと赤福をお腹いっぱい食べたから、夕食は市内にある定食屋で軽
く済ませ、ビジネスホテルに帰る途中だった。
「30年前はこんなに道路も整備されてなくて、アスファルトだけど白く亀裂だ
らけのボコボコの道だったな」
父は近鉄山田線とJRが交差する踏切を越え、ビジネスホテルに帰る途中の道
でそう呟いた。
「へぇ、そうだったんだ。市街地なのにボコボコ道なんて、今の時代には考えられないけどね」
「そうだな」
「時代は動いてるんだね」
父は何か考えている様子だった。
「まったくだ。今日泊まるビジネスホテルも昔は普通の旅館だった」
「そうなんだ、お母さんと来た時も、あのホテル……ううん、旅館に」
何か感慨深かった。父は母と来た旅館に30年の時を越え、娘の私と泊まろうと
思ったのだ。
それが心に響いた。
嬉しかった。
「……時代は動いてる……か。そうだな、動かなくちゃな」
そう言う父の横顔はどこか決意のそれが伺えた。
