カフェオレ三十路女が「ちょっくら青春してみるっ!」 とガンバったら、結構深い沼にハマってしまった件


【神域の西側を流れる五十鈴川は別名「御裳濯(みもすそ)川」と呼ばれ、倭姫命(やまとひめのみこと)が御裳のすそのよごれを濯がれたことから名付けられたという伝説があります。水源を神路山、鳥路山に発する、神聖な川、清浄な川として知られる五十鈴川の水で心身ともに清めてから参宮しましょう】


ふーん。でもこれって遠い昔の話しで最近じゃ、ちょっとは汚染されてるよ

ね、この川も……。

そんなことを思いつつも私は手を洗い、再び正宮へ向けて歩き出した。

広大な敷地の中、玉砂利を踏みしめる人たちの足音はそれぞれの業のようにエ

ンドレスに続いていた。

緑深の木々の間を続く参道は麗しの風景、心がすっと静かに落ち着く。

斎館、神楽殿を過ぎ、奥々へ入っていくと、凛とした空気が漂っていた。

長い石階段を上がる。その石階段一つ一つは実は、一つ石を削って作られてい

ると言う。長さにして5メートルほどの岩を平らに削り、階段状に並べていく

というとてつもない技術と老練な石師による匠の技だ。

だが一つの階段だけ、その石は二つに割っていると言う。これは、全て完璧に

完成させるのでなく、一つ遊びを持たす、まだまだこの階段も発展途上の一途

なのだ、だから敢えて溝を作り二つの石を並べているようにしたという云われ

が残る石段なのだそうだ。


深いわ……そう、何もかも……。


鳥居を潜ると、守衛の二人がお参りする場所の両端に立って目を光らせてい

た。さらに横を向くと、小屋みたいな中に装束姿の男性が書を筆にて綴ってい

た。

私と父は例によって、二礼二柏手をし目を瞑る。


静寂が支配していた。


他にも参拝客が沢山いるはずなのに、ここには私と父しかいない、そう感じと

れた。


神様……もしいるとすれば……あ、すみません、いらっしゃるんですよね、失

礼しました。私のお願いを聞いてくれますか。私は今、正直すごく不安なので

す。彼とはもう綺麗さっぱり別れようと思っています。そして女優をこのまま

続けて行きたいと思っていますが、あの場所に居続けることが今の私にとっ

て、周りのみんなにとっても正解なのか、どうなのか分からないのです。

独立してやりたい気持ちも正直あります。ええ、神様ならもう既に私の心をお

見通しかと思いますから、言っちゃいますけど。

お金も自宅通いとなってそれなりに蓄えることができました、父も心配です

が、あの『挑戦』を前々からしたいと考えてはいたんです。

もちろん逃げとかではなく……。