「あれだろ。これを見て、私には関係ないとでも思ったんだろう」
「図星。やっぱりそう思うよ、普通。だって私は別に食べ物屋さんでもないし、服・ブティックの店員でもなければ、大工でもない。そういう人がここでお参りしていいのかしら?」
私は、火除橋を渡りながら隣の父に素直な質問をぶつけた。
「社会てのは面白いもんでな、全然関係ないものかと思うけれど、実は一つに繋がってるんだ」
「そうかしら?」
「じゃぁ、食べなければ今の真希は生きていない。服を買ってる真希もいて、建て売りの安物件だったけど、家に住んでいる。そういう全てひっくるめての感謝をしてから、自分のお願いや神様に感謝をする。そういうものだと私は思う」
手水舎に到着し、父は手と口をゆすいだ。私も同じように、右手で柄杓を持ち
水を汲んで、その水を左手にそそいで左手を清めた。ついで、柄杓を左手に持
ち換え、同じように右手を清め、そして最後に、また柄杓を右手に持ち換え水
を汲み、その水を左の掌に受けその水で口をすすいだ。
なんか面倒臭いけど、これが本当のやり方というものらしい。
右側に大きな清盛楠という樹を横に私たちは神域内に入った。
表参道の玉砂利道を歩きながら、斎館(祭典の時に神職が参篭する場所)や神
楽殿を横に見、歩いて行くと、第二鳥居を潜りしばし歩くと、杉の木と並んで
長い板垣が見えはじめ、正宮へとたどり着いた。
鳥居の両脇に灯籠が置かれ、粛々とした雰囲気が辺りに満ち満ちていた。
父に続いて鳥居を潜り、参拝する所へ来る。正面には白い布が掛けられその数
メートル先にある本殿がどうなってるのかは詳しく分からない。でも、それが
逆に本当の神様がいるからこそ、そこまで厳重な警備をしているのではない
か、神社仏閣にはうとい私だが、それは合点がいった。
父の作法を真似、二礼二柏手をし、両手を合わせ、私はお願いをした。
……と言っても、ここはさきほどの言う通りならば、今私が生きている事、衣
食住全てに満ち足りて生活できている事、その感謝を捧げた。
そして一礼し踵を返すと、鳥居の下をまた潜り、参拝ルートの続きである土
宮・多賀宮・風宮も同じく参拝した。うっそうとした人気もない所だったが、
亀石や地蔵石などの奇石を見つつ、出口へと向かった。
父に「折角来たんだからお守りはどうする?」と尋ねると、
内宮でいいだろうと言った。
