カフェオレ三十路女が「ちょっくら青春してみるっ!」 とガンバったら、結構深い沼にハマってしまった件

「へえ~、知らなかった。……でも」


 私は運転している父の服装を見た。そういう自分は正装でないクセに。

「……あ、そっか。だからスーツを」


 私は後部座席にスーツが畳んで置いてあることをすっかり忘れていた。

「でもちょっとシワになってるかも知れないけどね」


 と、私は笑った。父も笑って、

「ふふ、それくらいなら大目に見てくれるだろう」

やがて車は伊勢市内に入り、伊勢駅近くにある伊勢神宮の駐車場に到着した。

ビートルから降りると、ひんやりとした空気が辺りには漂っていた。

「ここが伊勢神宮なのね……。やっぱり大きいよね」


父は一笑しつつ、後部座席からスーツを取り出しながら、

「ここは伊勢神宮と言っても外宮、正確に言えば豊受大神宮だよ」
「とようけ?」
「そう、伊勢神宮は外宮と内宮に別れている。ここ外宮はそう呼ばれているんだ。とりあえずスーツに着替えて参拝だ」

父に言われる通り、私と父はスーツを持ってトイレで着替えると、説明は続いた。


「そもそも私たち人間が生きていられるのもまず何があってのことだと思う?」
「うーん……空気? 水? 太陽?」
「この世の中ってのはまず衣食住で出来ているだろう。それがまずは基本。その基本の三つを奉ってあるのがここ豊受大神宮なんだ」


私たち二人は、鳥居の下を潜り中へ入った。

そして由緒書が書かれている立て看板を見る。

【豊受大神宮(外宮)
 御祭神 豊受大御神
 御鎮座 雄略天皇二二年
 豊受大神宮はお米をはじめ衣食住の恵みをお与えくださる産業の守護神です。今から千五百年前に丹波の国から天照大御神のお食事をつかさどる御餌都神としてお迎え申し上げました】


と、書かれてあった。

なるほど……でもこれって、お与えくださる産業って書いてあるから、

私は別に関係ないのでは? と思ったのだった。

父は私の横顔を見て、何か不服そうに思ったのか、それとも私の質問を察知し

たのか、先に切り出した。