カフェオレ三十路女が「ちょっくら青春してみるっ!」 とガンバったら、結構深い沼にハマってしまった件


よく目を凝らして見つめると、確かに男岩の方に何か置いてあるのが見える。

そしてその二つの岩はしめ縄で堅く結ばれていた。

「でもなんでしめ縄で二つの岩が結ばれているの?」
「夫婦円満・縁結びの象徴なんだ、ほら、確かにこうして見ると岩の夫婦みたく見えるだろう?」
「うん、なんとなく……」
「夫婦でここへ来たら、必ず幸せになれるのさ」


 確かにそういう言い伝えがあるのかも知れないけど……、

「ねぇお父さん、よく知ってるよね。初めてなのに」


 父は言葉に一瞬詰まってたが、

「まあな。旅するんだ、これくらい知らないとな」


 父は多少、見栄が入った感じの言い方をした。

「でも、私たち夫婦じゃなくて親子なんだけどね」
「……分かってる。さ、行くぞ」


父はそそくさと車に戻って行った。私もその後を追った。

なんでこの夫婦岩で降りたのかしら? ……まさか、私と?

ダメよ、近親相姦になるわよ、それって。

そもそもそんなの法が認めてくれないに決まってるじゃない。

ビートルを運転している父が、横にいる私を不信気にちらちらと見ていた。

「何困ったような顔してんだ?」


 私はパッと顔が赤くなった。

「……別に。暖房がちょっと暖かいのよ」


と、私は暖房のスィッチをOFFにし、窓を少しだけ開けて誤魔化した。

いけないいけない、この妄想グセ、なんとかしなきゃ……。

「ねぇお父さん……この旅って、ひょっとしてお伊勢参りでしょ」
「よく分かったな」
「分かるわよ、そりゃ」
「日本人に生まれたからには一度は行かないとな」
「もぅ、だったら、初めっから行く時に教えてくれればいいのに」


私はぷぅっと頬を膨らませた。

そして……私はある事に気づいた。

「ねぇでも、それだったら、もっとオシャレな格好で来ても良かったのに、なんでこんな地味な格好でしかも香水とか許してくれなかったの?」


 車はそろそろ伊勢神宮に到着しようとしていた。

「これだから近頃の若者は困る。そもそもな、神社仏閣にお参りしに行く時は、本当は正装で行くものなんだぞ」