父はその言葉に何か驚いたようだった。そして、
「……しょうがない、ちゃっかりしとるな」
と、笑いながらOKした。
一体、なぜ驚いた顔を一瞬したんだろう……そんなに私がおねだりする姿が珍
しかったのだろうか。
それにしても……スマホはもちろん携帯なんて昔はそんなもの持ってなくても
平気だったんだよね。便利なことは良いことだけど、便利よりもっと大切なこ
とが時にはあるかもしれないね。
フェリーは航海を続け、汽笛を数回を鳴らした。
それはそろそろ港へ着く合図でもあった。
やがてフェリーはスピードを緩め、かもめが飛び交う鳥羽港へと入って行っ
た。あっという間の55分と同時に携帯を失った55分でもあった。
私たちは車両甲板へと戻り、ビートルの中に戻った。
やがて目の前の大きなハッチが開き、真珠で有名な鳥羽の地を私たちはビート
ルによって踏みしめた。
ここが父さんの行きたがってた場所なのだろうか……それとも……。
ビートルは鳥羽駅前を通り、ミキモト真珠店の駐車場に停めた。
約束通り真珠のイヤリングを買ってもらうと父はどことなく嬉しそうな顔をし
ていた。
「どうせだからここら辺で軽い昼食にてもするか」
私と父は、軽く近くの喫茶店でサンドイッチとスパゲティーを頂き、ビートル
は再び走り出した。国道42号線を北に向かって。
その間、私はふと思った。このまま北上すれば、伊勢市へ着く。
伊勢と言えば……伊勢神宮だ。父はひょっとしたら伊勢神宮へお参りしに私を
一緒に連れてきたのではないかと。
そんなことを考えていると、父は車を42号線の路肩に停め、車から降りると
崖下を見下ろした。
ま、まさか……。
一瞬、あの事が脳裏に蘇った。
私は急いで車から降りると、父の傍らへ向かった。
「見てごらん、あれを」
父が指さしたのは、沖にある界面から頭だけ覗かせた二つの岩だった。
「あれは、夫婦岩っていうんだ」
「メオト岩?」
「その二つの岩、界面から大きく顔を覗かせているのが男岩。その隣の小さな岩が女岩。男岩の方にには小さな鳥居が置いてあるんだ」
「……しょうがない、ちゃっかりしとるな」
と、笑いながらOKした。
一体、なぜ驚いた顔を一瞬したんだろう……そんなに私がおねだりする姿が珍
しかったのだろうか。
それにしても……スマホはもちろん携帯なんて昔はそんなもの持ってなくても
平気だったんだよね。便利なことは良いことだけど、便利よりもっと大切なこ
とが時にはあるかもしれないね。
フェリーは航海を続け、汽笛を数回を鳴らした。
それはそろそろ港へ着く合図でもあった。
やがてフェリーはスピードを緩め、かもめが飛び交う鳥羽港へと入って行っ
た。あっという間の55分と同時に携帯を失った55分でもあった。
私たちは車両甲板へと戻り、ビートルの中に戻った。
やがて目の前の大きなハッチが開き、真珠で有名な鳥羽の地を私たちはビート
ルによって踏みしめた。
ここが父さんの行きたがってた場所なのだろうか……それとも……。
ビートルは鳥羽駅前を通り、ミキモト真珠店の駐車場に停めた。
約束通り真珠のイヤリングを買ってもらうと父はどことなく嬉しそうな顔をし
ていた。
「どうせだからここら辺で軽い昼食にてもするか」
私と父は、軽く近くの喫茶店でサンドイッチとスパゲティーを頂き、ビートル
は再び走り出した。国道42号線を北に向かって。
その間、私はふと思った。このまま北上すれば、伊勢市へ着く。
伊勢と言えば……伊勢神宮だ。父はひょっとしたら伊勢神宮へお参りしに私を
一緒に連れてきたのではないかと。
そんなことを考えていると、父は車を42号線の路肩に停め、車から降りると
崖下を見下ろした。
ま、まさか……。
一瞬、あの事が脳裏に蘇った。
私は急いで車から降りると、父の傍らへ向かった。
「見てごらん、あれを」
父が指さしたのは、沖にある界面から頭だけ覗かせた二つの岩だった。
「あれは、夫婦岩っていうんだ」
「メオト岩?」
「その二つの岩、界面から大きく顔を覗かせているのが男岩。その隣の小さな岩が女岩。男岩の方にには小さな鳥居が置いてあるんだ」