寒さも忘れ、星が綺麗に瞬く夜、伊良湖岬に立つ灯台のサーチライトが暗闇に

一瞬の光と多くの静寂を映し出していた。

私たちは初対面とは思わないほどユースホステルの門限22時ギリギリまで渚で

話した。

その後、お風呂を済ませ、部屋の中でもベットの中に潜って、仕事や恋の話し

をした。

初対面の人だからこそ、照れなどを忘れて思い切って話せることもある。

なんか修学旅行で布団の中で恋バナでキャアキャア話してた子供の頃の自分み

たいに。……なんか青春してる感じがしたそんな伊良湖の夜だった。
 

2月13日。晴れ。


朝靄に煙る伊良湖岬はとても静かだった。

伊勢湾から聞こえる潮騒と、窓から差し込む朝日が2日目の旅を私に教えてく

れた。

父と一緒に遅い朝食を済ませると、有森さんと内田さんは出発しようという所

だった。

昨日は伊勢市の小学校での公演、フェリーで伊勢湾を渡り、この伊良湖のユー

スホステルに宿泊。今日はこれから静岡の御前崎町まで行き、小学校で公演を

すると言う。

ここから東へ約80キロ、その足でそのまま舞台へ上がる……

私は頭が下がる思いだった。

お互いの連絡先(携帯の電話番号や家の住所など)を教え合い、

私たちは笑顔で別れた。きっと、また会える……いや、会わなくちゃいけな

い、そんな気がした。 

そして私たちもいよいよ出発となった。

父はビートルを走らせるとすぐ近くにある伊良湖港へと向かった。

フェリーの行き先は鳥羽港、所要時間は約55分。フェリーに車が乗り込む所

を間近でしかも自分ちのビートルが乗り込む所を見る私は不思議とワクワクし

た。

そもそもフェリーに乗るなんて、何年ぶりだろう。小学生の頃、箱根へ遠足に

行った時、芦ノ湖でフェリーに乗った以来だもの。

車両甲板にビートルは保管され、私たちは階段を上がり、客室へと向かった。

普通客室数は350名余りが入れる大きなフェリーであった。

インフォメーションセンターや売店もあるほどだ。

10時20分、桟橋から掛かる乗降口のデッキが外され、アンカーも外されると、

汽笛と同時にスクリューが勢い良く回り出した。

岸壁から離れだす。

海面にフェリーによって作り出された白波が弧は描いていた。