「でも、動かなかったんでしょ? だからずっと置きっぱなしだったんでしょ?」
「ああ……」
「普通なら廃車にするよ。でもしなかっただけ凄いと思う」
「廃車になんかできるわけないさ、できるわけ……」
父はエンジンを切ると車から降りた。そして改めてビートルを眺めた。
「こいつと俺は、言わば親友みたいなモンだ」
そう言うと、父はガレージから出た。私も出るとシャッター降ろし、
鼻歌まじりで家に戻って行った。
車が親友? 機械なのに? 男の人ってほんと車が好きだよね。
渡部もそんなこと言ってたような……女の私にとって、男の人のそういうのっ
て理解不能だわ……とその時は思った。あの話を聞くまでは。
2月12日、晴れのち曇り。
私はいつものように午前7時に起きると、半天をはおい、目をしょぼしょぼさ
せながら寒い中、外にあるポストへ朝刊を取りに行くのがいつもの日課なのだ
が、その日はポストの中に朝刊はなかった。
たまにあるのよね、新聞屋さん忘れたんだ……。
早速電話しようと、リビングへ行くと、父がこたつで新聞を読んでいた。
「あれ、早いね……どっか出かけるの?」
「ああ。なぁ、真希。ちょっと旅行しないか」
「ん? え、いつ……?」
「今日」
私はあ然となった。今日って! 何を言ってるか判ってるの? お父さん。
「え、でも、どこに行くの。それに宿だって決めてないでしょ」
「そんなのは関係ない」
父は新聞の天気予報の所を見つつさらりと述べた。外は晴天だけにこれぞまさ
に晴天の霹靂! と、ギャグ言ってる場合じゃないよね、なにどうしたのお父
さんって感じだった……。
だが父は本気だった。
私が旅行に行くのなら、あらかじめ言っておいて欲しいと言っても、
「それじゃ意味がないんだ」だって。
どういうこと? もう私はワケが判らなかった。
とにかく、バッグに換えの下着とシャツと靴下、ホテルにあると思うけどお泊
まり用の歯ブラシと洗顔フォーム、タオルに……それと、ホテルで就寝用のス
ウェットとジャージのトレーナー、スカートやセーターなど色々とバッグに詰
めた。お化粧ポーチもバッグの中へ入れる。
「ああ……」
「普通なら廃車にするよ。でもしなかっただけ凄いと思う」
「廃車になんかできるわけないさ、できるわけ……」
父はエンジンを切ると車から降りた。そして改めてビートルを眺めた。
「こいつと俺は、言わば親友みたいなモンだ」
そう言うと、父はガレージから出た。私も出るとシャッター降ろし、
鼻歌まじりで家に戻って行った。
車が親友? 機械なのに? 男の人ってほんと車が好きだよね。
渡部もそんなこと言ってたような……女の私にとって、男の人のそういうのっ
て理解不能だわ……とその時は思った。あの話を聞くまでは。
2月12日、晴れのち曇り。
私はいつものように午前7時に起きると、半天をはおい、目をしょぼしょぼさ
せながら寒い中、外にあるポストへ朝刊を取りに行くのがいつもの日課なのだ
が、その日はポストの中に朝刊はなかった。
たまにあるのよね、新聞屋さん忘れたんだ……。
早速電話しようと、リビングへ行くと、父がこたつで新聞を読んでいた。
「あれ、早いね……どっか出かけるの?」
「ああ。なぁ、真希。ちょっと旅行しないか」
「ん? え、いつ……?」
「今日」
私はあ然となった。今日って! 何を言ってるか判ってるの? お父さん。
「え、でも、どこに行くの。それに宿だって決めてないでしょ」
「そんなのは関係ない」
父は新聞の天気予報の所を見つつさらりと述べた。外は晴天だけにこれぞまさ
に晴天の霹靂! と、ギャグ言ってる場合じゃないよね、なにどうしたのお父
さんって感じだった……。
だが父は本気だった。
私が旅行に行くのなら、あらかじめ言っておいて欲しいと言っても、
「それじゃ意味がないんだ」だって。
どういうこと? もう私はワケが判らなかった。
とにかく、バッグに換えの下着とシャツと靴下、ホテルにあると思うけどお泊
まり用の歯ブラシと洗顔フォーム、タオルに……それと、ホテルで就寝用のス
ウェットとジャージのトレーナー、スカートやセーターなど色々とバッグに詰
めた。お化粧ポーチもバッグの中へ入れる。