「時間内で食べ終えてるのに、どうして注意されなければならないんです

か!」って……お母さん、私を庇ってくれたよね。

あの時は「もう恥ずかしいからやめて!」って言っちゃったけれど、

実はね、すごく嬉しかったんだ。

中学生の時だって、そんなに成績も良くなかったし、第一志望の高校に入れな

くて第二志望の高校に入らざるを得なくちゃって。第一志望の高校はお母さん

の母校だったよね、でもお母さんは頭良かったから、私にはちょっと無理だっ

たみたい。ガッカリさせちゃってごめんね。

高校生の頃、初めて彼氏ができて、お母さんには写真で見せたよね

「これが私の彼氏だよ」って。

家へ呼ぶまでに、結局別れることになっちゃってごめんなさい。あれだけ楽し

みに待ってたのにね。あれね、実は……彼が他の子と一緒に手を繋いで歩いて

るとこ目撃して……でもそれは後になって判ったんだけど誤解で、私から素直

に仲直りすれば良かったのに、なんか謝れなくて、そのまま自然消滅しちゃっ

たの。私ってほんとダメな子だよね。

ごめんなさい、お母さん。


ワガママで弱虫で、意地っぱりで落ち込みやすくて、怒ると無視するし、傷つ

くとすぐ凹むし、鼻は低いし、目もパッチリじゃないし、頭もさほど良くない

し、胸だってそんなに大きくないし、ごめんなさい。……あ、鼻と目と胸は仕

方ないよね、えへへ。

そんな私だけど、お母さんは私を産んで良かったって思ってる?

……私は墓前に手を合わせ、心の中で訊いてみた。




無音だった。

これがドラマやマンガだったら、お母さんの声がどこからか聞こえてきて、答

えてくれるんだけど、当然お母さんの声は聞こえてこなかった。

でもそれで良いと思う自分がいた。私の心の中では答えはなんとなく判ってる

から……。

うん、一々言葉に出して言わなくても、なんとなく判るよ、お母さん。言葉に

出さなくちゃ判らない、そんな上っ面だけの絆じゃないもんね。

父が持つ母の遺影、朗らかに笑ってる姿がそこにあった。