翌日、お寺には親戚一同が集まっていた。久しぶりに会う親戚の人たちは、

正直あまり知らない人たちも多かった。

その中で私と仲良かった母方の姉妹の姉の方の娘さんは、私と同い年で全てに

もう奥様、三歳の息子さんを連れてきたりしていた。

周囲のおじさんからは、毎度の如く「真希ちゃんはいつ結婚すんのかね?」

などと聞かれることには馬耳東風。

そんなこんなで、お母さんの三回忌が始まった。

父の挨拶から始まり、お坊さんによる読経が読まれ、全員がお焼香を済ませた

頃、時間にして20分くらいだろうか、そのくらいで読経が終わる。

もうその頃になると、私の足は感覚がないくらいシビレて、自分の足ではない

くらいだった。ほんとお坊さんはよく平気で正座を長くできるものだわ……。

そしてそのままお墓へ向かった。お坊さんによって三回忌が行われた卒塔婆が

新しくお墓の後ろに置かれ、参列者は一人々々手を合わした。

私の番になった。お線香を置き、母が眠る前で手を合わす。そして今までずっ

と聞きたかったことを聞いてみることにした。


ねぇお母さん……お母さんは、私がこのお仕事に就いたこと、正直どう思って

るの? やっぱりあのままヘアメイクとしてお仕事して、いつか素敵な人と巡

り逢えて、結婚して、子供を産んで……。

孫の顔も見ずに天国に逝ってしまったお母さんはそれで幸せだった? 

お父さんにいつもなんか言われても反抗することもなく生きて。私みたいな可

愛くない女の子が自分の子供で。

前に一回訊いた時、そう、女優さんを目指したいって言った時、

お母さん目を丸くして驚いてたよね。

「ヘアメイクに未練はないの?」って訊かれて、私は

「うん、未練ないよ。それよりもっと素敵なものになりたいって思っちゃった

から」って言ったら、ふふふって笑って

「じゃぁ、頑張りなさい。自分の進みたい道に進むのが一番よ」

……そう言ってくれたよね。

私、あの言葉を今でも感謝してる。

それで今まで頑張ってこれたと思うもん。でも、あの言葉は本心だったの? 

それが今一番聞きたいこと。

私は……私はお母さんの子供として生まれてきて良かったって思ってる。

だって考えてもみてよ……幼稚園の時、よく男の子にイジメられて泣かされて

た子だよ、私って。小学生の時だって、給食食べるのいつも遅くて、お昼休み

ギリギリでやっと食べ終えるぐらいだったもん。で、先生にもっと早く食べな

さいって注意されたって言ったら、お母さんすっ飛んで学校に抗議しに行った

よね。