ポケットから紙を取り出す。そこにはセンターへの道のりが書かれていた。

ま、市役所の近くにあるっていうのなら場所も分かる。

のんびりと行きますか。

……などと20分前に考えてた私の想像は砕け散った。

地図を見てもそれなりのビルもない。

一応、お役所的な存在であるシルバーセンター、それなりの建物で看板も出い

るはずである。

うろうろと辺りを徘徊して、かれこれ10分が経とうとしていた。

「まさか……」


さっきから私は気になるプレハブの建物を見ていた。それはビルとビルの間に

ある青空駐車場の片隅にひっそりとあった。

建物の近くまで来てみる。郵便受けの所に『シルバーセンター』

とロゴ入りのテンプレートが貼られていた。

私が中に入ると、そこは簡素な室内だった。よくある灰色の事務机が3台、壁

にはホワイトボード。職員も3人ほどだった。その中で私を見かけた女性がや

ってきた。歳にして50歳前後だろうか。

「何か? お仕事のご依頼でしょうか」
「あ、いいえ。あの……竹内と言います。父がいつもお世話になっております」
「あなたが竹内さんの……」


その女性は穏和な雰囲気が漂うふっくらとした人だった。その女性はまじまじと私を見つめていた。

「……はい?」
「あ、私はセンターの事務をやっております椎名と言います。竹内さんは確か……今日はお仕事に行かれてますよね」
「はい。ここで仕事をしている訳ではないんですか?」
「ふふ、よくそのように誤解されてる人もいらっしゃるんですけど、ここは事務所で、お仕事はご依頼先に出向させていただいてる形なんですよ」
「そうなんですか」
「あら、お父さんに聞いてらっしゃらないの?」


 頷く私に、椎名さんは不思議そうな顔をしたが、

「きっと、家に戻ったら仕事の事をとやかく言いたくないのかもね」

と、笑いながら言った。確かにお父さんの性格からしてそうかも……

正直そう思ったのだった。