自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 俺は目をつぶり、胸に手を当て、呼吸を整えると倉庫の裏手に回り、思いっきり石造りの壁を殴った。

 スゴーン!
 激しい音を立てながら壁面に大きな穴が開き、破片がバラバラと落ちてくる。

 若い男が立ち上がって身構え、叫ぶ。
「おい! 誰だ!」

 俺は静かに表に戻る。
 若い男は、ドロシーの手を押さえさせていた男にあごで指示をすると、倉庫をゆっくりと見回す……。
 ドロシーが自由になった手で胸を隠すと、
「勝手に動くんじゃねぇ!」
 そう言ってドロシーの頭を蹴った。
「ギャッ!」
 ドロシーはうめき、可愛い口元から血がツーっと垂れる。
 俺は怒りの衝動が全身を貫くのを感じる。しかし、あの男を殴ってもドロシーが首輪で殺されてしまっては意味がないのだ。ここは我慢するしかない。
 鑑定をしてみると……

クロディウス=ブルザ 王国軍 特殊工作部 勇者分隊所属
剣士 レベル182

 やはり勇者の手先だった。それにしても、とんでもないレベルの高さだ。勇者が本気でドロシーを潰しに来ていることをうかがわせる。なんと嫌な奴だろうか。こいつをコテンパンにしたら、勇者が泣いて謝るまで殴りに行ってやる!





2-4. 邪悪なる業火

「誰もいやしませんぜ!」
 見に行った男が、奥の壁の辺りを探して声を上げる。

「いや、いるはずだ。不思議な術を使う男だと聞いている。用心しろ!」
 そう言いながら、ブルザは並んでいる窓を一つずつにらみ、外をチェックしていく。
 軍人らしく、その所作には訓練されたものを感じる。
 俺は再度倉庫の裏手に回り、俺を探している男をそっと確認する。そして男の背後から瞬歩で迫り、手刀で後頭部を打った。
「グォッ!」
 うめき声が倉庫に響く。
 ブルザは男が俺に倒されたのを悟ると、
「おい! 出てきたらどうだ? お前の女が犯されるのを特等席で見せてやろう」
 そう大声で叫びながらかがみ、ドロシーのパンティに手をかけた。
「いやっ!」
 そう言うドロシーをまた蹴ってはぎ取った。
「いいのか? 腰抜け?」
「やめて……うぅぅぅ……やめてよぉ……」
 ドロシーはポロポロと涙をこぼす。
 
「さぁ、ショータイムだ!」
 ブルザはドロシーの両足に手をかけた。

 怒りを抑えるのに必死な俺に、アバドンから連絡が入る。
「旦那様、着きました!」