自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 空間を切り裂いたり不可思議な力を行使するドラゴン。そして、そのドラゴンの言う意味不明な事をよく理解しているユータ。二人ともなんだか別世界の住人の様にすら思える。
「帰ってきたら全部教えてもらうんだから……」
 ドロシーはテーブルに頬杖をつき、ちょっとふくれた。

 ピチョン……、ピチョン……
 どこか遠くでかすかに水滴の落ちる音がする。
 洞窟に作られた秘密の神殿。前に一度だけリリアン王女と一緒に連れてこられた思い出の神殿だ。こんな形で再訪するとは夢にも思わなかった。

 ドロシーはテーブルに突っ伏し、今日あった事を思い出す。自分が(さら)われ、ユータ、アバドン、レヴィアに助けてもらうも戦乙女(ヴァルキュリ)との戦闘となり、劣勢。ヌチ・ギは世界を火の海にすると言う……。
 何だか夢の中の話のようだが、現実なのだ。今、ここがこの世界の人々の命運を決める前線基地であり、唯一対抗できる二人の身体を守りきることがカギとなっている。そしてそれを託されたのが自分……。
 まさか孤児上がりの18歳の自分が、世界の命運を握るような大役を担うなんて全く想像もしていなかった。自分は食べていければいい、愛する人と一緒に暮らせればいいとしか思ってこなかった。
 しかし、世界はそんな傍観者的位置を許さず、自分を最前線の大役に置いた。それはユータとの結婚を望んだ結果であり、ある程度覚悟はしていたものの……、想定をはるかに上回る重責だった。
「ふぅ……、ビックリしちゃうわよね……」
 ドロシーはボソっとつぶやく。

 しかし、守れと言われてもヌチ・ギらの異常な攻撃力、不思議な技は非力な自分ではどうしようもない。もちろんこの神殿にはいろんな防護機構がついているのだろうが、いつまでも耐えられるとは思えない。
 レヴィアにもらったのは噴火ボタンだけ。しかし、こんなボタン本当に使えるのだろうか? 火の海になるって言っても、彼らがそれで躊躇(ちゅうちょ)するとも思えない。噴火を直撃させたら効きそうではあるけれども、彼らが火口に来て、かつ異変を感じても動かない、そんな都合のいい状況なんてどうやって作るのか?

 ドロシーはむくりと起き上がるとパシパシと両手で頬を打った。
「私しかいないんだから頑張らなくっちゃ!」