自宅で寝てても経験値ゲット!~転生商人が最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に

 泣いてる場合じゃない、なんとかしないと……。
 しかし、相手はこの世界の管理者権限を持つ男、直接やりあっても全く勝負にならない。どうしたら……。

 俺は恐る恐る現状分析を行う。ステータス画面を開いて見ると、千を超えていたレベルは三十にまで落ちていた。もはやアルより弱くなってしまっている。
 アバドンを呼ぼうとしたが、アバドンとの通信回線も開かない。魔力が落ちたので奴隷契約がキャンセルされてしまっていた。
 もはや飛ぶこともできないし、そもそも生きてこの山奥から出る事すらできそうにない。妻を奪い返しに行くどころか、自分の命も危ない情勢に俺は絶句した。
 誰かに助けてもらいたいが……、相手は無制限の権能をほこる絶対者。まさに死にに行くような話であり、誰にも頼めない。八方ふさがりである。
 妻を失い、仲間を失い、力を失い、俺は全てを失い、もはや抜け殻だった。
 俺は頭を抱え……、そしてそのままテーブルに頭をゴンとぶつけ、突っ伏した。
「もう誰か、殺してくれないかな……」
 俺はダラダラと湧いてくる涙をぬぐう事もせず、ただ、虚脱してこの理不尽な運命を呪った。

       ◇

「グフフフ……、無様だな」
 いつの間にかアバドンが来ていた。
 俺は身体を起こしたが……、何も言う事が出来ず、ただ軽く首を振った。
「もう、俺は奴隷じゃない、悪を愛する魔人に戻れた……グフフフ」
 嬉しそうに笑うアバドン。
「そうだ、もう、お前は自由だ。いろいろありがとう……」
 俺は力なく言った。
「強い者が支配する……、立場逆転だな。これからお前は俺の言う事を聞け」
 アバドンが正体を現す。
「ははは、こんな俺にもう何の価値なんて無いだろ。そうだ、お前が殺してくれよ……それがいい……」
 俺はガックリとうなだれた。
 アバドンはそんな俺を無表情でジッと見つめる……。
「死にたいなら望み通り殺してやる……。だが……、死ぬ前に一つ悪事を手伝え」
「悪事? こんな俺に何が手伝えるんだい?」
 俺は両手をヒラヒラさせながら首を振った。
「女を奪いに王都へ行く、ちょっと相手が厄介なんで、お前手伝え」
 アバドンは俺をジッと見据えて言う。
「女……、えっ!?」
 俺は驚いてアバドンを見た。
「急がないと(あね)さんが危ない」
 アバドンの目は真剣だった。