『昨日夢の中で聞いたら『結婚? そうなったら嬉しいですぅ』って言ってたわよ』
「えっ? えっ?」
 俺は言葉を失った。
『どうするの? するの? しないの? 切るわよ』
「ちょ、ちょっと待ってください! 彼女まだ子供ですよ?」
『何言ってんの。彼女、あなたよりずいぶん年上よ』
「はぁ!?」
 俺は予想外の事態にうろたえた。見るからに十代半ばの女の子が俺より年上だなんて一体どういうことだろうか?
『どうすんの? 私忙しいのよ』
「えっ、こういうのはじっくり考えないと……」
『その程度の相手ってことね。残念だわ。じゃあ……』
「ま、待ってください! します! 結婚……、いや、プロポーズ……します……」
『……。なんだか微妙に逃げようとしてない?』
「あ、いや、ちょっと心の準備がいるので、ちょっと時間だけください」
『ふぅん……、急いだほうがいいと思うんだけどな……。分かったわ。結婚式には呼んでね』
 ガチャ!
 そう言って電話は切れた。
「えっ!? 先輩、せんぱーい!」
 切られてしまって唖然(あぜん)とする俺。
「エ、エステルは?」
 俺はエステルの方を見た。すると……、太ももは真っ白だった。
「や、やったぁ!」
 俺は急いでその白くすべすべとした太ももをなでてみる。温かく柔らかく、傷一つなく完治していた。さすが先輩、完璧な仕事だった。
 俺は思わずガッツポーズをした。
「良かったぁ……」
 俺はへなへなと床にへたり込んだ。

 と、ここで、約束を思い出す。
 プロポーズ……、するって言っちゃった……。今さらなかったことには……できないよなぁ。
 俺はボーっとエステルの顔を眺めた。
 スースーと穏やかに寝るエステル。
 この子と結婚? 俺が? 彼女いない歴二十一年の俺がいきなり結婚?
 俺は一体どうしてこうなったのか、ひどく混乱した。
 もちろん、エステルは可愛いし、失いたくない大切な人だ。しかし、こんな簡単に一生を共にする伴侶(はんりょ)を決めていいのだろうか?

 俺はジーッとエステルの可愛い顔を眺める。サラサラとした綺麗な金髪に透き通るような白い肌。ちょっと低いけど、スッと鼻筋の通った形の良い鼻。プックリとおいしそうな果実のような唇。
 彼女が俺の嫁になる……。いいの? 本当に?
 俺はそっと頬をなでた。
「ソータ様ぁ……」