男は俺の身なりを一瞥すると、あざけるように言った。男の仲間もゲラゲラと笑う。

「冒険者は倒した魔物の成果で語るものだ。見た目で判断しない方がいい」
「偉そうにしやがって!」
 男は俺をドンと押し、その拍子に銅の認識票が胸元でチラリと顔を出す。
 それを見た仲間の黒いローブを着た女の子は焦った。
「ちょっと! ダメよ!」
 そう言って若い男を引っ張り、
「この人Cランクよ!」
 小声で男に告げる。魔導士だろうか?
「し、Cランク!?」
 男は目を白黒とさせた。
 彼女は、頭を下げ、
「ご迷惑おかけしました!」
 と言うと、みんなを連れてそそくさと立ち去って行く。
 認識票は最初から見えるところに出しておくべきだった。

 エステルがしょげて、
「ごめんなさい……」
 と、頭を下げてくるが、どう考えてもあいつらの方が問題だ。
「気にしなくていいよ」
 俺はそう言って、エステルの頭をポンポンと叩いた。

       ◇

 俺たちはダンジョンへと入っていった。まずは地下一階。
 エステルはいい所を見せようと張り切っている。

「ここは何度も来ていますからね! 任せてください!」
 そう言って、胸を張る。
「こっちから行くと階段に近いですよ!」
 エステルは俺の手を引いて細い洞窟へと入っていく。
「え!? こんなところ大丈夫なの?」
「ここは地図にも載っていない裏ルートなんです」
 そう言ってズンズンと進むが……

 カチッ!

 どこかで聞いた音がして床がパカッと開いた。
「ひぇぇ!」「うわぁ!」

 いきなり落とし穴にはまり、落っこちていく二人。ホーリークッションを使って落ちる速度は落としたが、早くも計画が狂ってしまった。

「ご、ごめんなさい……」
 ゆっくりと下降しながら、しょげるエステル。
「うん……、まぁ、気を付けよう」
 俺は額に手を当て、前途多難だと気が重くなる。
 あの若い男が怒っていた気持ちも少し分かった気がした。

 さて、どこに着くのだろうか……。
 俺は殺虫剤を軽くプシュっと吹いて臨戦態勢をとる。

       ◇

 落ちた先は広間で、ゴブリンが三匹いた。俺たちを見つけると、
「グルグルグル!」「グギャ――――!」
 と、叫びながら襲いかかってくる。

 俺は落ち着いてプシューっと殺虫剤を噴霧し、瞬殺した。