「そ、そうですよね! ソータ様ならどんな魔物でも瞬殺ですもんね!」
 パアッと明るい顔をして俺を見るエステル。
 俺はうんうん、とうなずいた。
 最終的に国の組織に所属するにしろ、情報を集めておくことは重要だ。何も知らずに国に利用されるような事だけは避けたい。
 まずは自分達だけでできる範囲の事はやってみようと思う。何しろ金には困らないし、逃げ場所としての日本もある。
 
      ◇

 立派な城門をくぐると、そこは中世ヨーロッパのような素敵な石造りの建物が並んでいる綺麗な街だった。路面は石畳で、馬車がカッポカッポと行きかっていた。

「うわぁ、素敵な街だね」
 俺が声を上げると、
「ここ、バンドゥの街はこの辺では一番大きいんです!」
 と、エステルが自慢げに説明してくれる。

 しばらく歩くと、剣と盾をあしらった看板が見えてきた。建物は石造りで歴史のありそうな重厚な(おもむ)きを感じる。
「ここが冒険者ギルドです! 魔石の買取と、ソータ様の冒険者登録をやるです」
 エステルがニコニコしながら言う。
「エステルの生還も報告しないとな」
「あっ、そうでした……」
 ちょっと恥ずかしそうに下を向いた。

 木製のドアを開けると、ギギギーときしみ、酒とたばこの臭いがムッと漂ってくる。
 正面にカウンターがあり、左右はロビー。数十人の冒険者たちが(にぎ)やかに歓談していた。
 俺はちょっとアウェーな感じを受けながらカウンターを目指す。

「あら、エステルちゃん!」
 渋い赤色のジャケットを着こんだ受付嬢は、エステルを見るなり驚きの声を出す。
「えへへ、無事、帰ってこられたです……」
「良かったわ……」
 受付嬢は涙ぐみながらエステルの生還を喜んでくれた。
「あなたのパーティはもう別の僧侶を見つけて、ダンジョンへ行ったわ。残念だったわね……」
「それは仕方ないです。それに、このソータ様と新しいパーティ組むので大丈夫です」
 そう言って、エステルは俺を引き寄せた。
「ソータさん……ですか? 初めてですよね?」
 防刃ベストに物干しざお、どう見てもまともじゃない身なりを怪訝そうに眺めながら言う。
「そうです。冒険者登録と魔石の買い取りをお願いできますか?」
 俺はそう言いながらバッグの魔石の山を見せた。
 受付嬢は魔石の量に驚き、そして魔石の山をジーッと見て……、