するとその人はパッとこちらを向き驚いた表情をしてから、ハッと我に返ったみたいに僕の質問に答えた。
「いや、たまたま私も借りたい本があっただけよ」
さすがに怪しすぎる。まだ僕のことを殺人犯とは言わずとも加担者と疑っているのだろう。
「じゃあ僕の勘違いですね。てっきり僕が事件に関与してるとまだ疑っていて、つけてきたのかと思いました。何かずっと誰かを探してるみたいだったので」
嫌味を込めてそう言った。警察と仲良くするつもりなんてサラサラない。もちろん小泉明菜の味方をするつもりもサラサラない。これは自分を守るためだ。僕が事件に関与してるとばれたら仕事や復讐も出来なくなる。
「本当に今日はたまたま同僚とブラブラしてただけよ」
警察であり、おそらく霞の母親なのであろうこの人はそう言ったが目を見れば分かる。半分本当で半分嘘と言ったところだな。
「ところで、前から気になってたんだけど…すごいマメの数ね…剣道とかやってるの?」
僕が持っていた新聞を見たあと逆の手を見てそう言った。このマメは拳銃を使っていると自然とできるものだ。ここで変な嘘をついてもあれなので彼女と同じように半分嘘で半分本当のことを言おうと思った。
「いえ、剣道はやってないですね、でもピストル射撃っていう競技をやってたことがありますね」