「そっか……なにか思い出したら連絡してね」
そう言い残して私たちは車に戻り、理於くんは自転車に乗り家に帰った。
「どうなんだろうな。怪しいと思えば怪しいし、怪しくないと思えば怪しくない。」
シートベルトを締めながら充がそう言ったが私も同じ意見だった。私の中で彼はまだグレーの状態だった。「この後どうする?飯でも行く?」
彼についてもっと知らなきゃいけないけど、今考えても仕方が無いので充の誘いに乗り夜ご飯を食べに行くことにした。
「ここ美味いんだよなぁ」
そう言って連れてこられたのはごく普通の定食屋だった。その定食屋は暖かく微笑ましい夫婦が営んでいる店だった。
「来週で安藤さんが亡くなって5年になるな」
頼んだサバの味噌煮定食を食べながら充がそう言ってきた。
「安藤さん…って私が死んだみたいじゃない」
充の言う安藤さんは私の夫だ。夫はとても優秀な警察官でとても優しい人だった。私みたいな出来損ないを優しく面倒見てくれて……私の自慢の夫だった。でも、ある事件に巻き込まれて死んだ。いや、殺された。この前の無惨な死に方をした人と同じように殺された。夫のためにも早くこの事件を解決したいのだけど一向に解決する気がしない。もうどうすればいいの?あなた…。