車に戻り後輩たちに病院へ寄った経緯を説明した。
「なるほど……じゃあ今度はその女性を探すんですね?」
そうしたいけど、
「いや、一度署に戻りましょう」
一旦状況を整理したかった。霞が言っていた佐々木理於の人物像と私がさっき話した佐々木理於の人物像はだいたい一緒だった。でも何か怪しい。だからグレーなのだ。念の為彼の部屋に盗聴器を仕掛けさせてもらった。警察官とはいえやってはいけないことなのでもちろんみんなには内緒だ。
「了解です!」
そう言って後輩は車を署まで走らせた。その間私はイヤホンを耳に入れ彼の部屋を盗聴するうもりだったが何も聞こえなかった。まさか、もう気づかれたのか?それか私が仕掛け方を誤ったか?
「どーだった?何かわかったことあったか?」
署戻り、そう聞いてきたのは同期であり、私と同じこの事件を担当する佐藤充。こいつは頭は冴えてるけど面倒くさがり屋だからこうしてクーラーの効いた部屋でダラダラして私たちの帰りを待つ。
「佐々木理於はグレーってところね」
そう言ってから今日あったことを伝えた。
「それは少し怪しいな」
感想はそれだけだった。
現在時刻は17時。ちょうどいい。
「ほら、早くその女性に話を聞いてきて?」
「は?俺が?なんで?」
「なんでって今日何もしてないじゃない。ほら後輩連れて早く行ってこい」
「お前は?」
「私はやることがあるから」
やることと言うのは建前で、今日は霞の誕生日だから早く帰ることにしたのだ。
「は〜、だる。まぁいいや、ほら行くぞー野郎どもー!」
相変わらず子供っぽい。あの掛け声は後輩ができてからずっとやってる。