マンションの前に着くと運転手に一万円を渡した。
「お釣りはいりませんから!」
5540円だったのでお釣りはで無いはずだ。
「え!?お客さん!?」
その運転手の声を無視してすぐに自分の部屋番号に向かった。
部屋の前に着くと小泉明菜はドアの前に寄りかかって空を見ながら僕を待っていた。
「おい。どういうつもりだ」
「遊びに来ただけだけど?それにしても隣町にいたにも関わらず早かったね」
「は?なんで知って……」
単純に怖かった。一気に鳥肌が立ち、走ってきた時に出てきた汗が引いた。
「たまたま見かけただけだよ?そんな怖がらなくても平気だよ?ほら、また親指隠してるし」
何もかも知られてこれ以上どうすればいいのか自分では分からなかった。
「ほら、早く!鍵開けて?」
「上がるのか?」
彼女は僕の部屋に入る気満々だ。というか上がらせないと帰らないと思ったし、ずっとここにいられると近所迷惑だと思い、小泉明菜を僕の部屋の中に入れた。これで2度目だ。全て不本意だが。