少し気まずい空気になってしまったが仕方ない事だった。
「この花の花言葉の由来はアングレカムの静謐な雰囲気にちなむともいわれてるんですよ」
その気まずさを壊すためか、そう説明してくれた。元々この花は花言葉以前に夫が仕事の机によく飾っていたのを覚えているから買ったのだ。彼がまだ生きている時、なんで飾っているのか聞いたことがあった。すると彼はこう言っていた。
『いつまでもあなたと一緒にいたいから』
まるで、自分が死ぬことをわかっていたみたいに。でも別に病気とかそういうものではなかった。自殺でもなく、事故でもない。夫は殺された。理於くんは直接殺した訳では無いと言っていたけど、そんなことはどうでもよかった。殺したことには変わりはない。
「そう…なんですね」
花を受け取り、花屋を出た。夫に逢いに行くために再び電車に乗ろうとしたが気分的に歩きたい気分だったので歩いて向かおうと思った。