「…特殊?」
私が聞く前に齋藤が聞いてくれた。
「はい。指紋がほんの少しも検出されなかったんですよ」
指紋が少しも検出されない事件はこれまでも多々あった。
「それってたまにあるんじゃないですか?」
再び私が聞く前に齋藤が聞いてくれた。
「ええ。ごく稀にありますけど、今回のはそれだけじゃないんですよ。ここは森の中ですよ。皆さん後ろを振り返ってみて下さい」
そう言われたので言われるがまま後ろを振り返ると、
「これって…」
「はい。足跡が着くはずなんです。でも、現場には被害者の靴の足跡しか残ってなかったんです。」
「ってことは自殺?」
その齋藤の言葉に思わず、
「そんなわけあるか!これを自分でやったというのか?」
たとえ自殺願望があったとしても自分でやるのは無理だ。それにこの事件は見たことがある。随分前だが。
「そして、凶器とみられるノコギリもまだ見つかってないんですよ」
またあいつが現れたというのか?
私の夫を殺したあいつが。