はぁ、はぁ……。本堂があまりに急ぐものだから、みな息が切れてしまった。
「やってみろ」
本堂が俺にボールを渡す。

 いつも通り、ボールを壁に向かって打ち付ける。どこに返ってくるのかは読めない。だが、ボールはいつも思っているより早く返ってくる。今日は近くに返ってきた。ボールの位置が把握できるとすぐに足を動かし、ラケットを振る。壁に向かってボールが当たって跳ね返る。

 あまりにボールが近くて体に当たってしまった。三球目になると、いつも返せないのだった。

「黒崎、お前けっこう壁打ちやってるだろ」
「え?」
「ちょっと見たらわかるんだよ」
本堂は、そう言うと壁打ちを始めた。ポーン、ポーン、とリズムよく返していく。十球は続いたか、というところでボールを止めた。

「壁打ちは、同じところに打ち続けることがポイントだ。できるか?」
「できないよ。俺にはそんな技術ないから……」
「ところが、お前にはそんな技術があるんだ」
「どういうこと?」
本堂はラケットを置いて、手を握り締めた状態で素振りを何度かしてみせる。その姿に、なにか見覚えがあった。町田も横で同じ動きをする。

「あ!!!」
町田の姿を見て、ようやく理解することができた。
「ワールドソードワーズ!!」

「そうだ、そうなんだ。お前のワールドソードワーズの動きをテニスに使えば良いんだ」
「あの動きを?」
「ああ、ほとんどすべてが応用できるはずだ。最初にお前の動きを見たときにどこかで見たことがある気がして、もやもやしていた。そしてお前が特別クエスト『襲いかかる魂』を始めたとき、ピンときたわけだ。さっき、投げつけられた魂を跳ね返す動き、それはちょうどボールを打ち返す動きと同じだ。ボールを魂だと思ってやってみてくれ」
本堂は、もう一度ボールを渡してくれた。言われるまで、そんなこと思いもしなかった。けれど、本堂が言うなら間違いないのかもしれない。短い付き合いだが、彼にはそんな信用を寄せ始めていた。

「やってみるよ」
俺はそう言って、再び壁と向き合った。