クエスト名、襲いかかる魂。画面の文字を見て、やったと声を上げる。このクエストなら何度かやったことがある。しかも、自分の得意なものだった。
「これはどうするんだ?」
町田が興味津々で聞いてくる。
「亡霊が魂を投げつけてくる。その魂が俺に襲いかかってくるから、それを刀で打ち返していくんだ」
「ほぅ、何かわからないけど難しそう」
まあ見てて、とコントローラーを構える。

不気味な音とともに、亡霊が現れた。
「よし、来い!」

ポーン、と亡霊に魂を投げつけられた。まっすぐでそんなに速くもない。俺はそのまま剣を横に振り魂を跳ね返す。

「わかった!!」
ずっと黙り込んでいた本堂が、突然大きな声を出した。
「ど、どうしたんだよ」
コントローラーを同じ調子で振り回しながらも、反応する。
「いや、そのまま続けてくれ」
「なんだよ」

本堂の方が気になりつつも、俺はゲームに集中する。敵が右に移動すると、前に出す足を右に向け必要がある。左はその逆。

敵のペースに合わせながらも、少しずつ相手の癖を読む。
「足元が弱いな」
俺は剣の傾きと振り方を調整しながら、魂を足元に向かって跳ね返す。相手が、倒れて消えていく。剣が浮かび上がった。超レアものだ。
「やったー!!」
思わず大声をあげて二人の方を向くと、何やら真剣な顔で話し込んでいる。

「って、誰も見てないじゃん」
「お前、そんなことやってる場合じゃないぞ」
町田まで、いつもと様子が違っていた。とりあえず、ゲームの電源を落とした。

「二人揃って、どうしたんだよ」
「お前、テニスのどこが難しいと思ってる?」
本堂が質問した。
「急にテニスのことなんて……」
「いいから!」
あまりに彼が真剣な顔をしているので、慌てて説明する。ラケットの面がボールに対してどう当たれば、どのように飛んでいくのか。考えれば考えるほど、体が固まってしまいボールが違う方向に飛んで行ってしまう。

「ネットを超えないといけないのに、面を上に向けすぎるのもいけないだろう。本当に難しいよ……」
「確かにそれは難しい。けど、お前はコツさえつかめばすぐにできるようになるはずだ。そして、お前にはちゃんと素質がある」
「え?」
突然のことに頭がついていけなかった。

「近くに壁打ちのできる場所はあるか?」
壁に向かって打つ練習か……。実を言うと、中学の頃は部活終わりにしょっちゅう行っていた。
「ここから歩いて10分くらいのところに」
行くぞ、と本堂は俺の腕を引っ張った。町田も慌ててついてくる。