スタスタ……サッ! いつの間に、と誰もが息を飲む。パーン、と軽快なショットが相手のいない場所に打ち込まれる。
「ゲーム、ゲームセットアンドマッチ。ゲームカウント6-1」
ワーッと部員が湧きたつ。これで、中央高校の県ベスト16が決まった。
「さすが本堂。あいつ中学の時全国行ったらしいもんな」
「いやあ、あいつみたいになりたい」
皆が口々に本堂のことをほめる。

「俺、やっぱテニス部入りたい」
気づけばそう口にしていた。
「え、黒崎……」
驚いた声を出したのは、中学から一緒の町田だった。
「お前、別のスポーツのほうが才能あるかもしれないぞ」
町田が俺の肩をたたく。こいつは俺のために言ってくれている。それはよくわかっていた。
「もう三年間、頑張ってみるよ」
町田に笑いかけると、彼は呆れたように肩をすくめた。